Lebensansichten des Kater Mugi

牡猫ムギの人生観

各ジャンル極私的オールタイム・ベスト

思うところあって、本やら映画やらもろもろのオールタイムベストを10点ずつ選んでみた。

映画

  1. 十戒(セシル・B・デミル、1956)
  2. タワーリング・インフェルノ(ジョン・ギラーミン、1974)
  3. リトル・ロマンス(ジョージ・ロイ・ヒル、1979)
  4. 風の谷のナウシカ(宮崎駿、1984)
  5. 細雪(市川崑、1983)
  6. ライトスタッフ(フィリップ・カウフマン、1983)
  7. 子供たちをよろしく(マーティン・ベル、1984)
  8. 汚れた血(レオス・カラックス、1986)
  9. ブロードキャスト・ニュース(ジェームズ・L・ブルックス、1986)
  10. シン・ゴジラ(庵野秀明、2016)

もともと4年前にはてなwashburn1975 さんのブログのオールタイム・ベストテンを募集する企画を見て、自分も応募しようと思い考え始めたのだけど、考えているうちに「やっぱり映画というのは、予備知識なしに映画館に見に行って事故的に感動したものが最良の出会いなのではなかろうか」という結論に達したのである(それでなんとなく応募もやめてしまった)。つまり、たとえば『雨に唄えば』とか『ゴッドファーザー』とか『ユー・ガット・メール』なんかは大好きで何遍も見返してはいるが実は劇場で見たことがない、とか、『この世界の片隅に』はメイキングやらネットの評判等をあらかじめ吟味して、秀作であることを確認するために見に行ったみたいなところがある、とか、そういう映画はマイベストと胸を張って言えないんじゃないかという気がするわけである。その意味で、『星の王子さま』やら『シンデレラ』なんていうのを見てがっかりする中でめぐり逢った3番なんかは、やはり自分にとって珠玉の1本ということになるのです。

本(小説)

  1. ノンちゃん雲に乗る(石井桃子
  2. 10月はたそがれの国レイ・ブラッドベリ
  3. 楡家の人びと(北杜夫
  4. セヴンティーン(大江健三郎
  5. コインロッカー・ベイビーズ村上龍
  6. 羊をめぐる冒険村上春樹
  7. シティ・オヴ・グラス(ポール・オースター
  8. 枯木灘中上健次
  9. 火の山-山猿記(津島佑子
  10. 万物理論グレッグ・イーガン

こないだ本棚にあった本をぱらぱら見ていたら本のリストを書いた紙がはさまっていて、どうも映画ベストテンとは別にこんなことを考えていたことがあったらしい(よく覚えてない)。1が小学生時代、2が中学生(演劇部の先輩がこの中の『骨』という話を放送劇にしたのがきっかけで読んだ)、3・4が高校生、5が浪人、6が大学、7以降は社会人になってから読んだ本である。どの作家も迷った挙句の1冊で、ほかに好きな作品はいくらでもあるという感じ(ただし村上龍だけはちょっと例外)。

本(ノンフィクション)

  1. 権威と権力(なだいなだ)
  2. 閉された言語・日本語の世界(鈴木孝夫
  3. アメリカ合州国本多勝一
  4. クリティック(四方田犬彦
  5. ディズニーランドという聖地(能登路雅子)
  6. 反=日本語論(蓮實重彦
  7. はじめての構造主義橋爪大三郎
  8. 現代論理学入門(沢田允茂)
  9. 秘伝 中学入試国語読解法(石原千秋
  10. UFOとポストモダン木原善彦

1・2が高校時代、3~8が大学生、9・10が社会人で読んだもの。
上の小説編にはもともと『コインロッカー・ベイビーズ』のかわりに『反=日本語論』が入っていて、それだけ浮いているのでリストを小説だけに絞り、あらためて小説以外で10冊選んでみた。「目からウロコだった本」と考え始めると次から次へと思い浮かんできて、わたし本といえば小説ばっか読んできたつもりだったけど案外そうでもなかったのね、という感じ。惜しくも予選落ちしたのは『近代読者の成立』『手塚治虫はどこにいる』『名画を見る眼』『東京ミキサー計画』『論理トレーニング』『わたしのオックスフォード』『あらすじと解説で『聖書』が一気にわかる本』『30キロ過ぎで一番速く走るマラソン』などであります。
それにしてもあらためて見てみると、4,6,7,8は順番を逆にして読むべきであったなあ。そういうとこだぞ自分、と思いました。

マンガ

  1. 火の鳥(復活編)(手塚治虫、1970 - 71)
  2. 下北なあなあイズム(石坂啓、1980)
  3. ヨウスケの奇妙な世界(高橋葉介、1979)
  4. カリフォルニア物語(吉田秋生、1979 - 81)
  5. 童夢大友克洋、1983)
  6. 機動警察パトレイバーゆうきまさみ、1988 - 94)
  7. 風の谷のナウシカ宮崎駿、1983 - 95)
  8. Papa told me榛野なな恵、1987 -)
  9. 大奥(よしながふみ、2004 - 21)
  10. 風雲児たちみなもと太郎、1979 - 未完)

マンガに関しては自分なりの地図というか見取り図というものを持っていないので、本当にたまたま読んで気に入ったものというだけのリストになってしまう。2の石坂啓は「マンガ少年」の別冊に載った『トンネルの夜』という短篇(受験戦争と本物の戦争が交錯する話)が当時のリアル受験生にとっては非常に衝撃的でほんとはこっちを挙げたかったのだが、今でもどこかで読めたりするのだろうか?

TVドラマ

  1. タイム・トラベラー(NHK、1972、原作/筒井康隆『時をかける少女』、脚本/石山透)
  2. 新八犬伝(NHK、1973 - 75、脚本/石山透)
  3. 男たちの旅路(NHK、1976 - 82、脚本/山田太一)
  4. たとえば、愛(TBS、1979、脚本/倉本聰)
  5. ケインとアベル(米CBS、1985、原作/ジェフリー・アーチャー、監督/バズ・キューリック)
  6. ER緊急救命室(米NBC、1994 - 2004、クリエイター/マイケル・クライトン)
  7. ザ・ホワイトハウス(米NBC、1996 - 2006、クリエイター/アーロン・ソーキン)
  8. カーネーション(NHK、2011 - 12、脚本/渡辺あや)
  9. ダウントン・アビー(英ITV、2010 - 15、クリエイター/ジュリアン・フェロウズ)
  10. ゲーム・オブ・スローンズ(米HBO、2011 - 19、原作ジョージ・R・R・マーティン『氷と炎の歌』、クリエイター/デイヴィッド・ベニオフ D・B・ワイス)

テレビというと『寺内貫太郎一家』『ムー一族』といったホームドラマや『8時だョ!全員集合』『ザ・ベストテン』のようなバラエティ番組もそれこそ夢中になって見ていたものだけど、これらは日常の延長というかほとんど無意識で見ていたようなものであり、その点(小学生だった1、2はともかく)3と4は「テレビドラマ作家」という存在を初めて強く意識させる作品であった。5はたしかアメリカでは3回にわけて放送されたものを、テレビ朝日が「日曜洋画劇場」の枠を第1回にして5夜連続で放送したはず。4と5はソフト未発売、1と2は映像そのものが(一部を除いて)残っていないのだそうだ。なんともはや。

舞台

  1. 11ぴきのネコ(テアトル・エコー、1973、金沢市観光会館)
  2. ヴェニスの商人(劇団四季、1977、金沢市観光会館)
  3. 高校生狂騒曲(石川県立工業高校演劇部、1978、金沢市北国講堂)
  4. ゼンダ城の虜(夢の遊眠社、1981、駒場小劇場)
  5. 朝日のような夕日をつれて(第三舞台、1985、紀伊國屋ホール)
  6. マハーバーラタ・若きアビマニュの死(横浜ボートシアター、1986、横浜船劇場)
  7. 天国から北へ3キロ(東京サンシャインボーイズ、1989、下北沢駅前劇場)
  8. マハーバーラタ(CICT、1989、銀座セゾン劇場)
  9. テンペスト(CICT、1991、銀座セゾン劇場)
  10. (勅使河原三郎ダンス公演)

3については説明が必要であろう。この年の「石川県高校演劇合同発表会」に、県立工業高校が突如(というふうに見えたのだ、ほんとに)つかこうへいスタイルのはっちゃけた芝居が出現したのである。聞くと作者は部員でも顧問の教師でもなく、なにかのツテで参加した外部の人だとのこと。つかといえば当時の東京の小劇場を席巻していたわけだけど、そんな流行に通じていた田舎の高校生なんてほとんどいなかったのではなかろうか。賛否両論を呼びながらもこの作品は優秀賞を獲得し、冬の中部大会に進んでいる(演劇部の友人と開催地の春日井市まで見に行った)。そしてつかこうへい風であるかどうかはおいといて、これをきっかけに石川の高校演劇界に「オリジナル脚本で高校生の等身大の心情を表現する」という流行がうまれ、翌年そういう趣向の2作(金沢大附属高と県立金沢商業高)が優秀賞をもらうのであった。また、県工演劇部のこのときのメンバーが母体になって、数年後金沢に「セブンスターズ・カンパニー」という劇団が生まれることになる。

10については、後日詳細を追記する予定。

音楽

  1. A Night at the Opera (Queen、1975)
  2. ザッツ・エンタテインメント(オリジナルサウンドトラック、1974)
  3. 愛していると云ってくれ(中島みゆき、1978)
  4. Hotel California (The Eagles、1976)
  5. Physical (Olivia Newton-John、1981)
  6. the celts (Enya、1986)
  7. 音楽の捧げ物(作曲/J.S.バッハ、演奏/ムジカ・アンティクワ・ケルン、1992)

音楽はマンガ以上に不案内なので、時代の流行などよりも個人的な記憶に強く結びついているものばかりである。毎朝高校へ行く準備をしながら聴いていた1、ほとんど演技(朗読)の教科書みたいにして覚えてしまうほど聴き込んだ3の冒頭『「元気ですか」』、予備校に通う電車の中でウォークマンで聴いた4、奥さん(になる予定の人)のご家族に挨拶にゆく道すがらずっと聴いていた6、唐突に始めた英語の勉強のあいだエンドレスで流し続けていた7……

おまけ

それぞれの作品のリンクを探していて感じたのは、映画やテレビドラマに比べて演劇とゲームのデータベースがないか、非常に貧弱なことである。とくに演劇は、誰の何という作品がいつどこで上演されたのかだけでも、きちんと記録されているべきではないかなあ。